「ねぇ見てくださいよ、とても綺麗な彼岸花が咲いてますよ。」
「ああ、もうそんな時期か。」
一つ一つ。
添えるための花の数が増えてく度に、哀惜は薄れて安らかな気持ちになるのはなぜでしょう。
──パン パン
「さて、さっさと帰ろう。」
最後の一輪を添え終えたあなたは、ぶっきらぼうに立ち上がって、手を差し伸べてきます。
「ええ、そうしましょう」
その手を握り返して、私も立ち上がりました。
「またいつか、会えますかね。」
帰り道、ふと溢れる独り言。
「どうだかな」
そしていつもの無愛想な言葉と、強くなるあなたの手の感触。
あなたと出会って53年。
この手のひらの温かさは、昔と全く変わりませんね。
11/22/2024, 2:26:04 PM