《上手に喋るにはどうしたら良いですか》
吃音だという、リスナーの少女からそういうメールが届いた。
「吃音、吃音、ねえ…」
「なんか、落ち着いてリラックスすればいいんじゃないですか?」
ラジオブースにいる他のメンバーは、上手く答えができずに困っている。ちらりと表情を見れば、皆一様に眉尻を下げていた。
目の前のマイクに拾われないよう、そっと静かにため息をついて、口を開いた。
「喋りに上手いも下手もないですよ。そりゃ人を楽しませる話術とか、そういうのが必要な場合はあるかもしれない。仕事上とかね。でもまず何よりも大切なのは、自分の思っていること、考えていることを伝えようとすることじゃあないですかね。それがなきゃ、どんなにギャグセンスとかが高くても意味がない。上手くなくてもいい。下手でいい。ただ君の真っ直ぐな言葉がきちんと伝わったら、どんな内容でも相手は笑顔になると思いますよ。現に私達は今上手く答えを喋れてませんでしたしね」
「おいー!俺頑張ったんだけどー!」
先程リラックスすれば…?と言ったメンバーがぶすくれて、他のメンバーも「調子に乗るな」と笑い出す。困った空気を上手く変えたので、それにのっていこうと考えたのだろう。呑気なものだ。
リラックスして上手に話せるなら、私だってあの時苦しんだりしてなかった。
8/9/2023, 11:51:20 AM