かたいなか

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「『◯◯ミッドナイト』とか『ミッドナイト◯◯』とか、前後に言葉付け加えたら、ぜってー真夜中ネタ以外も書けるだろ、これ……」
一番最初に閃いたのが「湾岸」よな。読んだことねぇけど。某所在住物書きは「ミッドナイト」にアレコレ追加して、検索窓に語句を突っ込み続けた。
ミッドナイトと有名アニメ、ご長寿ソシャゲ、等々。
てっきり某カードバトル漫画あたりにミッドナイトドラゴンだの、ミッドナイトマジシャンだの居るだろうと思ったら、ヒットしたのは黒い淡水魚であった。

「ミッドナイトねぇ」
物書きは呟いた。寝落ちは何ミッドナイトだろう。

――――――

1月最後の土曜日の、真夜中な頃のおはなしです。
都内某所、某アパートの一室での、残業ミッドナイトなおはなしです。
部屋の主を藤森といいまして、金曜の仕事がクソ過ぎて、夜通しチェックと修正をしておったのです。

今まで役職と親戚関係にあぐらをかいていた上司、課長にゴマをスリスリするしか特技の無い係長、その名も後増利というのが藤森の部署におりまして、
長年自分の仕事を全部部下に丸投げして、楽な仕事だけして、ぐぅたら、なまけていたところ、
そのぐぅたらが、職場のトップにバレました。
今年度中にあと1度でもなまけたら、係長からヒラに落とされてしまうのです。
後増利あわてて真面目にお仕事。でも今までが今までだったので、周囲としては、不安しかありません。
これが、だいたい前回投稿分までの内容なのです。

ずっと後増利の仕事丸投げ先にされていた藤森。善意と不安な予感で仕事内容をチェックしたら、
わぁ。なんということを、してくれたのでしょう。
あれよあれよ、新人っぽいミスに昔々の仕様三昧。
これではその日終わらせるべきお仕事が、来月末まで遅れてしまいそうです。藤森それは困るのです。

隣部署の親友の宇曽野に、事情を話して後増利の成果を持ち帰り、藤森は晩ごはんも食べず夜通しでチェック&修正。残業ミッドナイトです。
実は宇曽野、職場でこの秘密を知る者は、藤森とその後輩1名のたった2人しかいませんが、なんと職場トップのお孫さん。
おムコに入って名字を変えて、万年主任の下っ端の目線で、悪い上司や困ってる新人がいないか、トップの代わりに目を光らせておるのです。
その宇曽野の居る部署の隣で堂々お仕事サボっちゃったんだから、そりゃ悪事はリークされるのです。
詳しくは3月23日投稿分参照ですが、スワイプが酷く、ただ酷く面倒なので、気にしてはなりません。

「宇曽野。うその」
デスクに顔を伏せて、疲労コンパイな藤森。この時間に起きてるらしい親友にチャットアプリで通話です。
「あしたの……いや、ひづけ、かわったか。
しごと、むだんけっきんしたら、そういうことだから、しょるいとデータ、へやまでとりにきてくれ」
横向いた弱々しい表情、虚ろな目。小さく開いた口からは、なにやら心か魂か、出てきちゃいけない尊厳がプカプカ、出てきちゃってる様子。
藤森の部屋に諸事情で遊びに来てる子狐、それが見えているらしく、前足でちょいちょい、おくちでカプカプ。楽しそうに遊んでいます。

『まともに仕事できないの、後増利の自業自得だろ』
スマホ越しの宇曽野、藤森のお人好しっぷりに、大きなため息ひとつ吐いて、言いました。
『あいつの問題なんだから、お前じゃなく、あいつに全部やらせちまえよ。その方が良い勉強にもなる』
それができたら、わたし、くろうしないよ。
藤森ポツリ反論しますが、声が小ちゃくて小ちゃくて、宇曽野には届きませんでした。

「あいつにしごと、やらせたら、ウチのぎょーむ、ぜんぶ、おくれるぞ」
『そしたらそれを理由に、じーちゃんが後増利を処分するから、逆にお前の仕事量も減って楽になるだろ』
「のちのち、じゃないんだよ。『いま』が、ヤバいんだよ。うその……」
『ひとまず寝ろ。一旦やすめ』

プカプカ、カプカプ。心ここに在らずな藤森。
それから最後のチカラを振り絞って仕事のチェック&修正を終わらせて、午前3時か4時あたり、ようやくベッドに入れましたとさ。 おしまい、おしまい。

1/27/2024, 1:31:26 AM