てふてふ蝶々

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父の浮気が原因で、専業主婦の母はキッチンドランカーと言われるアルコール中毒。
私は進学校と呼ばれる私立に通う高校生。
進学以外の選択肢はないと信じていた。
だから、ことごとく失敗した受験の結果で、専門学校に通う手続きは終わって、まもなく卒業。
入学式までの間は母と一緒に買い物に行ったり、料理をしたりして、母からアルコールを遠ざける努力をした。
4月。父は帰宅する事はなくなったが、給料の振り込みは変わらない。
5月。ゴールデンウィークは母と過ごす事を心がけつつ初めてのアルバイト。
6月。父、久しぶりの帰宅。母と喧嘩している様子。
7月。母がお酒を隠していた。ベッドの裏から発見。
8月。父の勤める会社が倒産。
お盆はいつも父の実家に帰省していたけれど、今年はどうするんだろうか?と考えながら眠りについた。
夢。
私の前に2本の道がある。
隣にはもう1人。私にそっくり。鏡に写したような私が言う。
「私は、片一方の道を選んで終わった先から来たの。
どちらを選んだかは言えない。でもね、私の人生やり直すならここかなぁって思っただけで、やり直したいとは思っていないのよ。」
夢だし。夢だから。
「私の人生って幸せ?」
鏡写しのような私は笑って
「ううん。ちっとも。だから、今チャンスをもらったのかなぁ」
と。どっちかの道を選んだら、幸せになれないらしい。
「学校を続けるか。辞めるか。って事?」
と、今の選択肢を問う。
「まぁ、短絡的に言えばそうなるかも知れない。そうじゃない選択も分かれ道がたくさんあるよ」と。
じゃあ、分かれ道はここじゃなくてもいいだろうに、私の未来を知る人は今、来たのだ。
「どうして今なの?」と、問う。
「お盆だから。」と。死んだ人はお盆に帰ると聞くけれど、本人に帰るのにもお盆は関係するのだろうか。
死んでみなければわからない事もあるのだろう。
「アドバイス的な何か。選び方とかは?」
こっちの道に進んでって言われた方が楽なのになって思うけど、どっちか言えないらしいかさ。こう聞くしかない。
「んー?どうなんだろうね?私の選んだ道は歩んで欲しくなくて来たけど、その先にも分かれ道がたくさんあったし。私は最善を選んだつもりだったんだけどなぁって思ってるから、いいアドバイスなんてできないや。」
あははと笑う未来から来た人に殺意を覚えたけれど、死んだらしい人はなんともないみたい。
「でもさ、生きてりゃ探せばいい事の一つや二つはあるよ?億万長者とか世界一の美人とかは無理かもしれないけど。幸せじゃない私の選んだ道にも一つは誇れるものがあるよ。」
専ら楽観的に生きてきた私と同じなそっくりさんは死んでも楽観的らしい。
「誇れるものって何?」と聞く。
鏡写しの顔の私は鋭く真面目な顔になって。
「それは進まないとわからないよ。今教えてあげたらダメな事だと思う」
夢なのに、途端に怖くて「そう…」としか言えない。
「お母さんは元気になる?」代わりにそう聞く。
鏡写しの私は
「わからないけれど。難しいかもしれないね」と、凄く凄く悲しい顔をする。今後、母がどうなるか想像がついた。悲しいけれど。
そうか。母の人生は母のもので、私のものじゃない。
私がそう考えたのがわかったのか、鏡写しのように私にそっくりな人は酷く優しい顔になって。
「ありがとう。」
そう言ったか同時に目が覚めて、いつもより少し早起きな事に気付いて、二度寝を決める。
次に目を覚ましたのは母が起こしに来たから。
お母さんに起こされるのは久しぶりだなぁと寝ぼけながらのっそり起き上がる。
お母さんは化粧をし、お出かけ着を着ていて、びっくりする。
どうしたの?って聞きたいのに声も出ない程驚いた。
お母さんは
「私。私の生きたいように生きるから。父さんの実家には行かないわ。あなたどうする?」
と。
そう言えば、私はお母さん似だったっけ。

7/17/2023, 12:49:13 PM