刹那
__あの日から私の頭の中は、あの人のことでいっぱいになった。
なんとなく、あの人は私に似ていると感じた__
一ヶ月ぶりだろうか、今日は、珍しく雨が降っていた。
昼になっても止む気配はなく、なんとなくクラスの雰囲気はどんよりとしていた。
「…なんじゃこれ。」
ふと、昨日、あの人が彼の机の中にパンのゴミを入れていたことを思い出した。
「えっと、昨日の放課後にこの教室に来た子が入れていってたよ」
「あぁ、あいつか…。
そいつと話したのか?」
「少し」
「面白いやつだろ、俺の幼馴染でな。こうして構ってほしい時にゴミを入れていくんだよ。
わかりやすいやつだよな」
(たいていの人は嫌がらせだと思うけど…)
苦笑いをすると彼は突拍子のないことを言った。
「一緒に飯食わないか?
あいつも喜ぶと思う」
「そんなことはないと思うけど。」
「んなことわかんねぇって、ほら行くぞ。
あ、今日こいつ借りてくな!」
彼は自分がクラスメイトから慕われ、そして、女子からモテていることをもう少し理解してほしい。
現に、私の友達は彼を好いており、彼女から向けられる視線が痛い。
「__お前アホか?」
屋上まで連れて行かれ、少々息を切らしてしまった。
まだ降っている雨だが、その人はなんの躊躇いもなく、紙パックを片手に飲み、フェンスにもたれていた。
「はぁ。
さっさと教室戻れ。雨だぜ?」
「やなこった。
今日はお前と食うんだ!」
「ならお前一人でいいだろ。」
「だって、最近この子、あの人たちといても苦しそうだからさ。」
「なんだお前、こいつのこと好きなのか?」
「好きだよ。
あ、もちろんお前のことも好きだぜ。」
「……。」
その人は呆れたようにため息をつき、彼が差し出したハンカチを受け取るとなぜか紙パックを拭いた。
彼は、自身のブレザー脱げば、そのブレザーでその人のびしょ濡れになっている頭を拭いた。
ふと目が合い、彼はそのまま少し恥ずかしそうに口を開いた。
「…物事は、人も、モノも、刹那で生まれて、刹那に消えるんだ。
同じ雨、って言うけどさ。
今落ちてるやつと、さっきのやつ、別モンだろ。」
その人は、頭を犬のようにブルブルと振りその場に座った。
「あちょ、けつ冷たいだろ!
これ下に引け!」
なんも躊躇いもなく自身のブレザーを差し出し、そうだな、と、なんの躊躇いもなく座るその人たちに、私はなぜか心底羨ましい気持ちが生まれた。
「お前も座れよ、昼休みが終わるまであと5分だぜ」
「え!?」
「ほら、食えって。冷めるぞ。」
4/28/2026, 2:30:42 PM