創作 「沈む夕日」
みかんのグミのようにぷるぷるとした太陽が、海面にぶつかったところから、ゆるゆると溶けている。
甘酸っぱい記憶をいっぱいに吸った太陽は、胸へと染み込んで、涙となって溢れた。
夏の空気を燦々と振り撒いた太陽の残り香は、迫り来る夜に薄められ、ただ湿った後悔だけがわだかまる。
後悔は夜闇に紛れて、足首を掴む。
将来が我が身を押さえて、首を絞める。
沈む夕日は、影を見ない。
音もなく、未練もなく、
燃えるその身を蒼い塩水に沈めていく。
(終)
4/7/2024, 11:19:59 AM