水上

Open App

夏の香りがする。テーブルの上で、茹でたての枝豆ととうもろこしが湯気を上げる。

「まだ熱いからね」

そう言って笑う顔は、随分と皺が増えた気がする。

「すごい量」

居間の大きなテーブルを埋め尽くす食べ物。明らかに息子一人を出迎えるには多すぎる。

「大丈夫、食べれる分だけ食べたらいい」

取皿と、いつまでも実家にある俺の箸。捨てていい、割り箸でも使うと言ってもそうはいかんと突っぱねられる。両親の箸を買い替える時に、一緒に新しくなっていたりもする。

「ほれ、飲むぞ」

瓶ビールと冷えたグラスを抱えた父が戻ってくる。足が随分細くなったように見えた。

「コロナが、落ち着いたら――」

注いでもらったビールに口をつける。言おうか、言うまいか。どう思われるだろうか。

「落ち着くかねぇ」と母。
「いつまでもこのままってこともないだろ」と父。

グラスを傾けると、ずらりとかけてある写真と目が合う。何枚も並ぶ中で、唯一知ってるじーちゃんの写真。小さい頃はよく遊んでもらった。

「コロナが落ち着いたら、温泉にでも連れてくから」

「どしたの突然」
「明日は槍でも降るか?」

「まぁ、たまにはね」




〉今一番欲しいもの

7/22/2022, 5:12:41 AM