無音

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【51,お題:花畑】

最近よく夢を見るんだ

僕は、昼夜問わず眠くなってしまう体質なんだけど
眠ってしまったときは決まってこの夢を見る

大きな花畑の真ん中で、誰かが立ってる夢

顔まではわかんないし、喋ったこともない知らない人のはずだけど

この夢から覚めた時は、いつも大切な何かがこぼれ落ちたような虚しさがあった。



また、この夢...

たくさんの花に囲まれた、もう見慣れてきた風景が目に入る
ザァっと風が吹き、いつもの誰かが数メートル先に立っていた

ここまではいつもと同じだった

しかし、花畑に立ちすくんでいるその人は、何故かこっちに向かってきた

いつもと違う...

初めて違う行動をしたのと、今日は顔が見えるかもしれないという
少しの期待に、ドキドキしながらその人が近付いて来るのを待った

「ここに来ないで!お兄ちゃん!」

「えっ」

初めて見た顔は、恐ろしい程自分に似ていた。

自分と同じ黒髪を後ろで低く結った、自分とそっくりの顔をした少女

面識はない...はず、しかもさっき「お兄ちゃん」って...

「帰って!ごめんなさいもう連れ込まないから」

ギュンと景色が歪む
何事かと辺りを見回したときには、もう既に半分ほど闇に飲まれていた

「ねえっ!君...」

どこかで会った、そう聞く前に僕の意識は途切れてしまった。


目を覚ますと、いつもの風景
父さんと母さんは、ぼんやりと部家の壁に背を預けていた

「ねえ...父さん、僕って......双子だったりする?」

かつてないほどに見開かれた瞳に、僕は確信した

あとから聞いた話だけど、僕は双子で妹が居たそうだ
でも、建物へ避難してる途中で爆発に巻き込まれて亡くなった

あの子が夢に何度も僕を呼んだのも、きっと寂しかったんだろう

「...いつでも呼んでよ、会いに行くから」


その晩見た夢では、花畑の真ん中でとびきりの笑顔で笑う妹がいた

9/17/2023, 1:05:46 PM