No.6『君のため』
散文 / 闇 / 恋愛 / 掌編小説
今日も真っ赤な目をしている君は、泣き腫らしたのか、それとも眠れないなのかどっちなんだろう。ふとそんなことを思った。片思い歴が長すぎて、どれくらい君を見て来たのかは不明だが、君が真っ赤な目をしているのはここ最近のことだ。
そう言えば恋人の姿も最近、見掛けないような気がするが、むくりと湧き上がった期待感をぐっと胸に押し込める。もう幾度となく期待してはがっかりして来たぼくは、君の様子を慎重に見極めるようになっていた。
もし、もしもだけれど。眠れないほどの何かが君の身に起きているのだとしたら。もしかして、最近見掛けなくなった恋人が関係していたりなんかしたら、もう君のことを放ってはおけない。
今まで幾度となく声を掛けては、お節介だと跳ね除けられて来たぼくの行動。今、この時、君のために起こしてもいいのだろうか。
お題:眠れないほど
12/6/2022, 7:41:46 AM