「自分のお葬式に飾ってもらうなら、何の花がいいだろう?」
菊と百合の花にあふれた空間を後にして黒い服を脱ぎながら、ふと考えた。
とはいえ、自分が死んだ後のことだし、真剣に考えたところで仕方がない。
黒い服をハンガーにつるしおえながら、
「ま、別に何の花だっていいか。菊や百合で文句があるはずもなし」
の結論に至る。
はたして家族なのか自治体の方かは分からないけれど、後始末をしてくれるどなた様かに一任でございます。
花を添えて送り出してくれるだけで、十分すぎるというものよ。
──ああ、でも。
本当は、ほしい花束があるんだ。
私が一番好きな花は、シロツメクサ。
最後の時には、シロツメクサの花束を持たせてほしい。
昔、小さな手が集めて作って渡してくれた、シロツメクサの花束。
もし、あの甘い匂いを胸に抱いて眠ることができたなら、いつどんな形で人生を終えるのだとしても、
「本当に幸せな人生でした」
そう神様に報告できるような気がするから。
2/9/2024, 4:01:05 PM