「子猫」
「ニンゲンしゃん!おはよ!」
「あー……まだ4時だぞー……?もうちょっと寝よう?」
「ねんねもいいけど、おしゃんぽ!ちよ?」
「あと3時間……待って……。」「ぎゅーされちゃった。」
こうするとよく寝るから助かる。
温かくするとよく寝るのはみんな同じなのか。
しかし、この子は頭のてっぺんから足のつま先まで柔らかい。
よく寝てくれるところも含めてまるで子猫だ。
さて、自分も寝直すかな。
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……今何時だ?7時半か。ちょっと寝過ぎたか?
おちび怒ってるかな……と思ったがまだ腕の中で眠っていた。
ちょっとほっとした。
「んにゃ……ニンゲンしゃ……?」
「朝ごはん食べようかー。」「んー。」
朝食には簡単なものを作る。
昨日のゆで卵とマヨネーズを和えてパンに挟む。
これだけでそれなりに美味しい。
「おいちいね!ちあわちぇ だね!」
「幸せかー。よかったよかった。」「ん!」
「ごちちょーしゃま でちた!」
「じゃ!おしゃんぽ!いく!」「はいはい。」
にしても、この子やたら外が好きだよな。
何か理由があるんだろうか。
そういやもう片方の方もそうだったっけか。
双子揃ってアウトドア派か。元気でよろしい。
「ニンゲンしゃーん!きょ、どこいく?」
「今日は公園に行ってみるか。」「ん!」
「こーえん!しゅき!」
怪我しないようになー、と声をかけたらベンチに座る。
いや、この子は小さいんだった。急いで滑り台に向かう。
「気をつけてな。」「ん?んー!」
小さい子は滑り台とか好きだよな。
自分はどうだったっけ。
あまり、覚えていないや。
とにかく。
子どもを遊ばせるのって変に気力と体力を使うな……。
「ニンゲンしゃん」「ん?」「ちかれたの?」「え?いや。」
「んー。」「でも、なんで?」「わかんない!」
「もっとあしょびたいけど、もうかえる。」
……子どもに気を遣われてしまった。これは良くない……。
どうにかしないと……「ふわふわ!」
「へ?」「ふわふわのこ!いる!」「あ、あれは。」
まごうことなき子猫。
よちよち歩きのまだ小さな白い子猫。
ひとで例えたら……ちょうどこのおちびくらいか?
「ニャー」「どちたの?」「ニャー!」「ん!」「ニャー、ニャ!」「わかったー!」「ちょっと待って」「「?」」
「なんで会話できてんの」「えー?ニンゲンしゃんできないの?」
そりゃ、違う生き物だから。
ひと同士ですら話が出来ないこともあるのに。
「ふわふわちゃんもおうちかえるって!」「え」「ニャー」
「だって、いってたもん!おうちー、て。」
「ねこ……その子はきっと家族に会いたいんじゃないかな。」
「きょうからボクとニンゲンしゃんが かじょく!」
「いや、でもいきなり連れて帰るのは難しいというか……。」
「や!このこと やくしょく ちたもん!」「ニャ。」
ぎゅっと子猫を抱きしめる。子猫もまんざらでもなさそうだ。
全く。
うちがペットの飼える場所でよかった。
「ただーま!」「……ただいま。」
「ねこちゃ、ここがボクのおうち!」「ニャー!」
「これからよろちくおねがいしまーしゅ!」「ニャ!」
「おなまえ なんていうの?」「ボクの名前かい、⬜︎⬜︎。よく知っているはずだが……。」「え」「んー?わかんない!」
「なにたべるのー?」「桜餅かなー?」「へー?」
「ねこちゃ、なでなで!」「へへへ〜!」
「ねこちゃ、おちゃべりできたのねー!ひとみちり だったのー?」「ニャー」「にゃー!」
「ニンゲンしゃんのほうにいっちゃった。」
「なあ、チビ猫。」「ニャー?」「お前だろ、マッドサイエンティスト。」「よく分かったねー!」「わかるわ!」
「いやー、今ちょっと呼び出され中なんだが、退屈でねー。それで、キミ達の様子でも見ようかと思ってさ!」「そしたら仲良しにしていて羨ましくてさあ!」「……。」
「しょうなのー。ねこちゃ は ⬛︎⬛︎ちゃんだったのー。」
「あ、⬜︎⬜︎。」「ぎゅー!かわいい!」
よく見たら、この猫の目の色、ミントグリーン……。
「おい、マッドサイエンティスト。」「なんだい?今こねこねされるのに忙しいのだが〜?」
「変な心配させんな!」「ボクの心配を?」「ちゃうわ!」
「お前のせいで危うく10万のキャットタワーと猫の保険に入るとこだったわ!!」「悪かったって!ほら、この通りだ!!」
うるうるの目つきで足元を転がってみせる。
全く。
子猫は可愛いな。
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
そして、構造色の少年の名前と正体が分かったよ。なんと彼は、父が考えた「理想の宇宙管理士」の概念だった。概念を作った本人が亡くなったことと、ボク以外の生きた存在に知られていないことで、彼の性質が不安定だった原因も分かった。
ボクが概念を立派なものに書き換えることで、おそらく彼は長生きするだろうということだ。というわけで、ボクも立派に成長を続けるぞ!
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11/16/2024, 8:27:47 AM