たまには
目を閉じれば、君の顔がすぐ思い浮かんだ。柔らかそうな細い髪質も、猫のような瞳も、鮮明に思い出せるのに。
どうしても声だけは思い出せなくて、どんな声をしていたのか、思い出せないことに自然と涙が出た。
たしかに君の声でこの名前を呼ばれることが好きだったのに。なんで忘れてしまうんだろう。
ぎゅっと握りしめた紙には君の少し特徴的な字が書いてあって、そこに書いてある文字にまた泣きそうになった。
『たまに思い出してくれたら、それでいいよ。たまには、ね。だから、それ以外のときは笑ってくれていたらいいなぁ』
3/5/2023, 1:45:56 PM