卵を割らなければ

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まだ知らない君

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きみはまだ 何も知らない
死を知らない
そんな死なんて まだ早い
なぜって 生まれていないから
きみはゆらゆら 浮かんでて
守られている 夢ごこち

きみはまだ 何も知らない
世界を知らない
どんな世界に 生まれ落ち
きみはいったい 何になる

何になっても かまわない
なぜって きみはきみだから
なぜって きみは殻のなか
殻の割れる日 いつの日か

目玉焼きかな オムレツかも
卵かけご飯は TKG
ゆで卵に スクランブルエッグ
それともふんわり カステラに

黄身はまだ 何も知らない
白身もね


――S子著「小鳥の歌」p.47 小鳥の子守歌より


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【本文より抜粋】
"小鳥の世界の子守歌は、意外なことに残酷な現実を歌っていた。だが鳥の子どもたちはこの歌でよく眠る。私ならとても眠れそうにない。とはいえ、これは鶏の話である。小鳥にとっての鶏はどういった位置付けにあるのだろう。大変興味をそそられる。"


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【著者あとがきより抜粋】
"私はある朝、小鳥のさえずりが意味のある言葉に聞こえた。心をしずめ、耳をすます。すると鳥たちは、実にさまざまなことを歌っていた。これは、私が10年にわたり書きとめた小鳥たちの言葉の記録である。"


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1/30/2025, 12:20:21 PM