隣の席の氷見くんは
普段からポーカーフェイス
授業中も
休み時間に
友達と会話するときも
氷見くんと
特別に仲良くなりたい訳じゃないけど
ちょっとした興味で
私はある作戦を決行した
小さな白い紙に
縦横2本ずつ
直線を引き、真ん中に○を書く
それを小さく折りたたんで
氷見くんの机の左端に置く
氷見くんは横目でちらりと
私を見て、折りたたまれた小さな紙片に手を伸ばした
紙を開いて数秒思案した後
さっとシャープペンを走らせ
また、折り目に沿ってたたんだ
氷見くんは前を向いたまま
グーにした左手で
私の机の右端を撫でるように
かすめて紙片を置いた
まさかお返事をもらえると
思わなかった私は
嬉々として
紙片を開いた
『あほか』
私が書いた縦横棒を
ガン無視した3文字が
堂々と真ん中に鎮座していた
私はがっかりして
じとっと氷見くんを見た
氷見くんは何食わぬ顔で
授業を注視していた
その横顔が
もっと精悍になって
黒ぶちメガネから
コンタクトに
イメージチェンジした
氷見くんは
懐かしむように
苦笑しながら教えてくれた
「はじめは、授業中に○✕ゲームに誘うなんて「何考えてんだ、コイツ」って思ったし、どちらかというと迷惑なヤツだなと」
でも私は、諦めなかった
氷見くんに何度も
秘密の手紙を送り続けた
そして、、
「でも、懐柔されちゃったんだよね」
ふふっと私は笑った
「お前の不真面目さを正すつもりが…まぁ、負けたよ。ミイラ取りがミイラにされたんだから」
氷見くんは笑って、私の髪の毛をわしゃわしゃっと、かき回した
#秘密の手紙
12/5/2025, 9:01:10 AM