流れ星は少女の元から飛び去ってしまいました。
一緒に見た夕日も、
一緒に探した四つ葉も、
一緒に語り合った夜も、
ぜんぶぜんぶ放り投げて、真っ暗な空へ飛び込んでいきました。
「行かないで、行かないで、お願いよ」
少女が必死に叫びます。
もう手が届かないほど高く飛び上がってしまった流れ星に向かって、少女が何度も呼びかけます。
けれど流れ星は止まりません。
命を賭した輝きをまとって、真っ暗な空を駈け上がります。
少女がもうこれ以上迷子にならないように、星の無い空を見上げて泣いてしまうことがないように、そんな祈りを込めながら懸命に走ります。
「お願い、お願いよ、お願いだから行かないで」
だから、少女の言葉は届きません。
もう二度と、少女の願いは叶いません。
おしまい。
『行かないでと、願ったのに』
11/3/2025, 4:14:07 PM