ミキミヤ

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幼稚園年少さんの頃、人生で初めて将来の夢を訊かれたとき、私が答えたのは『お姫様になりたい』だった。
フリフリのレースの付いたドレスを着て、薔薇の咲いた庭園で優雅に紅茶を嗜む。みんなに尊敬されるお姫様。そういうものに憧れていた。
あの頃は本当に自分でもそういう存在になれると信じていた。現実は、ごく一般的な中流家庭の子どもで、フリフリのドレスとも薔薇の庭園とも縁遠かったのに。

それから30年弱経って、今はごく普通に働いている。
白いシンプルなブラウスに黒いスラックスで、家ではだいたい白湯を飲んで生きている。うちの庭には薔薇の一本も無い。誰かに尊敬される人間になれているとも思えない。
現実は、幼い私が思い描いた夢とはかけ離れている。

幼い頃の夢とはかけ離れた今だけれど、この自分も私は結構好きだ。
毎日一生懸命働いて、休日には友人と会ってお茶したり、趣味のイベントに行ったりする。こんな現実も悪くないと思っている。

お姫様にはなれなかったけれど、それでいい。
幼い頃の夢は大切に心の奥の箱に仕舞って、等身大の現実を私は生きていく。

12/5/2024, 7:18:02 AM