いぐあな

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300字小説

ひみつのはなし

 ひみつ、ひみつ、二人だけのひみつ。飼い猫のにゃーたが尻尾を振る。
 内木のおばあさん、亡くなったおじいさんが憑いて守っている。この前の『オレオレ詐欺』の電話の相手、おじいさんに怒鳴られて腰抜かしてた。
 ひみつ、ひみつ、二人だけのひみつ。まさふみくん、まだ、お家に居る。おかあさんが泣いてばかりいるから心配で西に旅立ててない。
「えっ?」
 仏壇の息子の遺影に目を向ける。供えたおもちゃがカタリと動いた。

 五月晴れの青空の下、息子の好きなお菓子と花を持って墓参りに行く。
「ごめんね……お母さん、もう泣かないから……」
 線香を手向けて手を合わせる。ゆらりと風に乗って流れる煙を見送るように、にゃーたが空を見上げて鳴いた。

お題「二人だけの秘密」

5/3/2024, 11:39:36 AM