曖昧よもぎ(あまいよもぎ)

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とある者は言った。人の死に美しさなど、兵器に美しさなど、必要ないのだと。その瞬間、僕は初めて他人に殺意を抱いた。


僕の研究はいつも、周りには受け入れられないものばかり。交友関係など持たずに、いつでもどこでもひたすらに研究。授業中でも構わない。食事中でさえ、そのことで頭がいっぱいになる。まさに四六時中と言った具合だ。そして実験、工作。そんな僕は、気味が悪いと蔑まれ、罵られることは日常茶飯事だった。“かみさま”だけが僕を肯定してくれた。

「君がつくったものが、いつか、誰かを救う」
「でも、それはいつだって君の知らないところで、君の知らない日で、君の知らないひとだ」かみさまは言った。

僕は、僕の作品達を、大切な子供達を、届けたい。苦しみ飢える人に。それを必要とする人に。それが叶うなら、命だってなんだってくれてやるさ。




――――後のインタビューにて、彼は語った。
『嫌だったんでしょう、自分がではなくて、誰かが莫迦にされたように感じて。どんなに悪趣味だと思えても、この世界に生きるたったひとりでも、僕の発明が必要であれば、それを肯定すべきだと思います。僕は、ただ、誰かの心の傷に寄り添っていたいだけですよ。名前も、顔も、住所も、年齢も、何もかもが分からない、けれども確かに存在している誰かを、救いたい』
我が社のインタビューの四日後、彼は自宅で亡くなった。遺書があったため、自殺と見て間違いないだろう。そこには“かみさま”という謎の人物に対する狂愛と嫉妬、はたまた羨望が綴られていたと言う…。


八作目「届いて.....」
僕のかみさまは、誰かのかみさま。僕だけのかまさまはどこ?
曖昧は無宗教ですが、美青年狂信者と言っても過言ではありません。

7/9/2025, 1:34:10 PM