霜月 朔(創作)

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どうしても…




私は世の中から、
捨てられた存在。

残酷な社会が、
私をこんなに傷付けたのに、
傷だらけで呻く私の事を、
皆、見ない振りをしました。

でも、貴方は違った。
こんな醜い私に、
救いの手を差し伸べて、
居場所を与えてくれたのです。

何も持たない私に、
優しさと温もりを、
教えてくれた貴方は、
私の全て、でした。

でも、貴方にとっては、
私が貴方の全て、
ではなかったのですね。

貴方の優しさは、
他の人にも向けられるもの。
貴方の温もりは、
他の人にも与えられるもの。
そして、貴方の愛は…。
私ではない『誰か』に捧げたもの。

私の中で、
黒い何かが膨れ上がります。
それは、
貴方の愛を奪えと唆すのです。

だから、私は。
貴方のワインに、
私の血と蠱毒で彩られた、
魔法をかけました。
二度と私の夢から目覚めない、
永遠の愛という魔法を。

貴方は眠りにつきます。
貴方の鼓動は徐々に弱まり、
呼吸は小さくなってゆきます。
そんな最期の吐息を、
掬い取るように、
そっと口付けます。

どうしても…
貴方を奪われたくなくて。
どうしても…
貴方の全てが欲しくて。

だから…私は。
貴方を永遠という檻に、
閉じ込める事にしたのです。

でも、大丈夫です。
私がずっと一緒に居ますから。
これからは、二人きりで、
永遠を揺蕩いましょう。

5/20/2025, 2:32:16 AM