#6 鏡
鏡とは、反対の世界。
着ている服も、顔も、動きも、全て反対に写す。
でも、反対なのは見た目だけじゃないみたい。
ある日、いつものように学校へ行く準備をしてた。
髪を結ぶ位置は耳より下。
スカート丈は膝下10cm。
前髪も眉毛から出ないように。
模範的で、優等生らしい格好。
そうしてたら、急に鏡の中の私が変わったの。
髪の毛は下ろしてパーマをかけてて。
顔にはメイク。
服も制服じゃなくて肌の露出が激しいワンピース。
鏡の中の私はこう言った。
「こっちの世界、来てない?」
聞くと、鏡の世界での私はやんちゃっ子らしい。
見た目は言わずもがな、素行も悪く。
学校なんかろくに行ってない。
「こっちの世界に来れば、
あんたの好きに遊べるよ。」
そう言われて私、我慢できなくなったの。
今までずっと模範的でいようとしてたけど
ほんとは髪の毛を巻いてみたかった。
スカートももっと短いのが着たいし
勉強なんてしたくない。
だから、すぐに頷いた。
鏡の中の彼女は笑って、私と世界を入れ替えた。
そこからは好きなように遊んだ。
髪の毛も下ろして、可愛くパーマをかけて。
服もノースリーブやミニスカを着て。
普段は行かないような店に行って。
すごく楽しかった。
でも、この世界では、誰も私を褒めてくれなかった。
当然だよね。
だって、この世界での私はいい子じゃないだから。
褒められるようなことなんて何もしてない。
そう思うと、ああやって我慢してたのも無意味ではなかったように思えてきて。
もっと、褒めてほしくなった。
だからね私、鏡の私にお願いしたの。
「元の世界に帰して」
って。
でも、ダメって言われちゃった。
彼女はあの世界が楽しいみたい。
模範的で優等生らしい私の生活が気に入ったみたい。
でも、元々は私の世界なのよ。
私のものなんだから、返してくれたっていいじゃない。
あぁでも、私が元の世界に帰りたくて彼女は帰りたくないなんて。
ほんとに、鏡は全てが反対なのね。
8/18/2023, 11:07:31 AM