—ひなまつりの願い—
もうすぐ、ひなまつり。
家で雛人形を飾っていると、昔のことを思い出す。
「お母さん! どうしてうちはこんなに小さいの?」
一段の雛飾りを指差して、私は言う。
友達の家には、十二段もある、綺麗なお雛様が飾られていた。
「ごめんなさいね。うちはこれが精一杯なのよ」
母は苦い笑みを見せる。
うちは母子家庭だ。家計が苦しいことは、当時の私にもわかっていた。
「そうなんだ……」
「あんまり悲しい顔をしないでちょうだい。それでもお母さんは、あなたが幸せになれるように願っているから」
「うん……」
そして、母が本当に私を大事に想ってくれていることもわかっていた。
「うーん、そうねぇ」
母は思案顔になると、折り紙を一枚取り出した。何かを思い出しながら、折り始めた。
「何を作ってるの?」
私がそう訊いても、集中しているせいで答えてくれない。
「できた!」
「すごい!」
母は、雛人形を折り紙で作ってくれた。
「私も作る! どうやって作るの?」
そうやって私たちは、十一段分の雛人形を作った。雛壇はなかったけれど、作った雛人形は全て飾った。
母との懐かしい思い出だ。
「お母さん! 私も手伝う!」
大きな声が背中から聞こえる。振り返ると、娘が笑っていた。
今、こうやって幸せに暮らせているのは、母のおかげだと私は思う。
ひなまつりは、お雛様の大きさじゃない。
大切なのは、そこに込められた『想い』の大きさなのだ。
お題:ひなまつり
3/4/2026, 5:05:12 AM