一尾(いっぽ)

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→短編・ほんのり怖い

ベッドの上は安全地帯。
シーツの中は私の領域。
はみ出さないようにシーツにくるまる。
耳なし芳一を教訓に、隠し忘れがないように、自分の一部が欠けちゃわないように、慎重に慎重に自分を包む。
そんな子ども時代の恐怖防壁を思い出す。

病院の夜。
静かなようで何処からか音が聞こえる。
暗いようで明るい。ホテルとは違う匂い。
初めての入院。
慣れない雰囲気。
何があるわけでもないんだけど……―って! いやいやいや、6人部屋なのに、何故に私一人の摩訶不思議。
間仕切りカーテン、閉めても開けてもなんか怖い。空のベッド5台vs 私のベッドっていう、圧倒的ボッチ感。
映画館で一人だったら、金持ちシアター気分だけどさ。
これは、ムリ。 
余計な恐怖がヒタヒタすり寄ってくる。

あぁぁ、あと二夜。ここで過ごすのかぁ。
シーツ丸かぶりで、乗り切れ、私!


テーマ; 病室

8/2/2024, 4:17:15 PM