やっと見つけた!――わたしは友達を伴れて、近所中のスーパーやらコンビニを回っていた折りのことだった。わたしは小躍りしながら、友達に小さな箱を自慢げに見せつけた。
というのは、先日新しく発売された、卵型のチョコレートの中に小さなフィギュアが入っているという仕掛けのお菓子――言ってしまえば、チョコエッグというやつ――をようやくのことで一つ買うことが出来たのだ。
今度出たシリーズは、わたしも好きな、或る人気ゲームのキャラクターのフィギュアということで品切れが続き、どうしても手に入れたいわたしは、暇さえあれば、このチョコエッグを探してあちこちの店を回遊しているのだった。
ついでだからとスーパーでお好み焼きの材料を買い込み、わたしたち二人はわたしの借りているアパートへと帰って来た。
今日はお好み焼きパーティーと洒落込むぞ――わたしは啖呵を切った。が、結局はチョコエッグの中身が気にかかる。
「さっさとそれ開けちゃってお好み焼きに集中したら?」
友人の冷静な指摘に頷くと、わたしは手早くチョコエッグの包みを開け、中のフィギュアを確かめようとした。何故こうも熱中しているのかと言えば、このお菓子を買うこと計五度、いずれも同じフクロウのキャラクターが出てきたために、せめて一度は別のものをと躍起になっていたのである。またあいつが出たらどうしよう――
「愛があればどうとでもなるよ」てきぱきとお好み焼きを作る準備を始めていた友人が言う。「強く念じながら開けたらいいよ」
そんなものだろうか。そこばくの疑問を差し挟みつつも、わたしは念を凝らした。わたしの指先が願望の触手となって、チョコレートをこじ開ける。
無い!――無いんだけど!わたしは驚き、友人に向かってそう告げた。
通常であれば入っているはずの、小さなフィギュアを封じたカプセルが、そこには無かったのである。
「あぁ、残念。愛が足りなかったんだな。じゃあ、ついでにこれも割っといて」
友人は淡白にそれだけ言うと、わたしの目の前に卵――一応言うと本物の鶏卵だ――とボウルを置いた。
悔し紛れにチョコレートを口に放り込むと、わたしは大人しく卵を割った。
うわぁ!入ってた!――わたしは驚きの余り、椅子から転げ落ちる。た、卵に……
さすがの友人も、やや呆れを含みつつも驚いたような目をして、ボウルを覗いた。そして、その底部から、或るものをつまみ上げた――例のフクロウのフィギュアである。
「愛、だな」友人はそう言うと、卵黄にまみれたフィギュアを水道で洗い、卓上へと置き据えた。フクロウの目が、床の上で尻餅をついた格好のままでいたわたしを見つめる。
もう絶対買わないよ、こんなの!――わたしの叫びを掻き消すように、キャベツを切る音が冷ややかに響いていた。
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愛があれば何でもできる?
5/17/2023, 4:11:17 AM