ストック1

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「やぁエリー、私と一緒に全国一位を目指さないか!」

幼馴染のミラベルが突然、入部届を片手に私のところへやって来た
ミラベルは魔法のじゅうたんのレースをやっていて、部活ではかなりの成績を収めている
一方、私は部活には入っていない
少し退屈を感じつつも、自由な時間を確保しておきたかったのだ

「私、スポーツはちょっと……」

先輩や先生の圧が恐そうだし、どうせ入るなら魔法実験とか、それ系の部活に入りたい
入る気はないけど

「私も無理にとは言わないけどさ
エリーっていつもつまんなそうじゃん
ここらでいっちょ、今まで見向きもしなかったことに挑戦してみるのもありなんじゃないかと思うわけ」

「でもスポーツって、ひたすらしんどい印象あるし」

「そこは問題ないよ
ちょっと大変だけど、それは他の部活も同じだし、今は昔と違って楽しむこと第一にシフトしてるから、成長のための指摘や反省会はあっても、怒られることとかはないんだよね」

私の、ミスすると怒鳴られたり、厳しく叱咤されるイメージは古いらしい
ついていけない部員が次々やめていったり、先輩や教員の態度への苦情が増えたことで、部員への負担などの問題が明るみになり、教員への講習なども行われ、改善されたのだとか

「先生もダメで元々、ハマってくれたらラッキーの気持ちで、お試し入部でいいよって言ってくれてるし、やってみよーよー!」

「うーん、じゃあちょっとだけ
合わないと思ったらすぐやめるよ?」

「やったー!」

魔法のじゅうたんレース
他のレーサーと生身で激しくぶつかる箒のレースと違って危険度は少ないけど、大きい分コントロールが難しく、じゅうたんのメンテナンスも箒以上に大変、というレースまでの地道な努力が他よりかなり大事な競技だ
とても難しそうだし、私にとってはまだ知らない世界で、不安はあるんだけど、ミラベルはなんというか、色々な意味で人を見る目があって
たぶん、つまらなそうだったから誘ったってだけじゃなく、私に向いている部分があると感じたからこその提案なんじゃないかと思う
ダメならすぐやめればいいし
試すだけ試すのも悪くないよね
そんな風に考えていた

その時はまさか、私とミラベルで二年後、全国一位を本当に取るとは思わなかったし、その後、二人で同じプロチームに入って、レースでご飯を食べていくことになるなんて、想像もしてなかった
ミラベルから部活に誘われてなかったら、今頃何をしていただろう?
……そんなことは考えるだけ無駄か
私の世界を広げてくれたミラベルには感謝してもしきれない
昔からミラベルは、私を引っ張っていってくれる
まあ、ミラベルに言わせれば
「エリーも、後ろから私の背中を押して前に進ませてくれてるけどね!」
ということらしいけど
お互い、引っ張っていったり、押していきながら、これからも前進し続けられたらいいな

5/17/2025, 10:58:05 AM