導(しるべ)

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早朝、いつもより早く目が覚めたから窓を見ると、朝顔が咲いていた。 
昨日まで蕾だった朝顔が、いくつも花開いていた。
マゼンタに青色、紫色。
鮮やかな花々が寝起きの頭と眼には眩しすぎるくらいの色彩を見せつけてくる。
今度色水でも作ってみようか、と頭の片隅で考える。
彼なら、その色を存分に活かして絵を描いてくれるだろうと。
あわよくば、その絵を店で飾ったり。
暖かい紅茶でも飲もうと思い共用のスペースへと足を運ぶと、お目当ての彼がソファで眠っていた。
こちらの気配に気付いたようで、目を擦りながらゆっくりと起き上がる。
「おはようございます……いつもより早いですね…?」
「おはようございます。今日はいつもより早く目が覚めましたから」
ソファで寝ると体痛めますよ、と言って彼を起こし、話を持ちかける。
「そういえば、今日朝顔が咲いていましたよ。色水でも作って絵を描きませんか?」
そう言うと彼は目を輝かせて「やっと咲いたんですか?ずっと楽しみにしてたんです!」と子供のように言う。
直ぐさま外に出ようとした彼を引き止める
「あ、その前に、紅茶を飲んでいいですか?」
すると彼は頬を緩めて「もちろんです。…僕も、ココア飲みましょ」と言った。
二人でキッチンに並ぶ初めての朝、無言だったけれど、なぜか気まずさも居心地の悪さも感じなかった。
「俺、朝顔ってまともに見るの初めてなんです。楽しみですね」

7/23/2024, 11:18:52 AM