はとぽっぽ

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甘いだけの夢に浸かっていたら
人間、幸せになれるのだろうか



まあ現実、そんな人生平々凡々な自分には縁遠い話で…

1ヶ月に1度だけの贅沢。
底の見えない、真っ白な湯船に浸かり、甘い匂いに包まれながら、溜まった疲れを少しでも癒す。

目を閉じると、余計な事を考えてしまうので、自分の動きに合わせて動く湯を、ただぼーっと眺めて、暖かさを堪能する。
もう春も終わると言うのに、ここ最近の寒暖差に、身体はいつもに増して疲れている様な気がする。
同じ部署の何人かも風邪を拗らせていたので、自分もいつ移ってもおかしくない。

一人暮らしで、風邪は大敵だ。
温まったら、今日は早く寝よう。


最後に湯を掬って、顔に掛けようとした。

だが、掬おうとした手に何かが当たった。


何か、人の、頭の、ような………



一人暮らしの自分の家なのに…………………?





微睡かけていた思考を叩き起こす。
早く出なければーーーっ


しかし、風呂を掴んだ瞬間、何かに両手を掴まれる。
手だ。
人間の手に見える。



「大丈夫だ。落ち着いて、ゆっくり息を吸うが良い。私は決して怪しい者では無い」

そうは言われても、風呂に入る人の股の間から突如現れた生き物を見て、誰が落ち着いて居られるだろうか。
息の吸い方が思い出せない。

立ち上がったその男は、身なりがまるで御伽の国から飛び出した王子の様だ。
服も髪も、殆ど濡れていない。
少し水滴を払う様な仕草で、白い手袋で白いスーツをさっと触れると、最後に白いネクタイを、きゅっと引き締め

「この湯の様に甘いメモリーを、私と共に刻もうではないかっ!!!!!」

なんて事を、くるりと掌を上に回し、指を刺しながら言われた。


おかしいな。日本語なのに、上手く理解が出来ない。



底の見えない甘さから



(ネタ出し冒頭ですみません)
お題 sweet memories

5/3/2025, 9:36:17 AM