一人でいた頃は宝物が沢山あった。
お気に入りの手帖。
お気に入りの腕時計。
お気に入りの服。
一緒に遊べる友達、仲間。
そんなものが全て宝物だった。
結婚して最初の頃は彼女が宝物だった。
やがて子供が出来て子育てが始まり
だんだん宝物とかどうでもよくなっていた。
手帳も買わなくなった。
腕時計もはずして
服なんかも着られればなんでもいい感じになった。
友達とも会わなくなって、
仲間みたいな関係の人も
職場に行けばギリギリいるかな?
みたいな感じになっていた。
子供たちが巣立ち、僕は猫を飼った。
猫はいつもそばにいてくれてすぐに僕の宝物になった。
でも一年足らずで彼は逝ってしまった。
その時はじめて妻と二人、向かい合って泣いた。
二人で一緒に泣いた時、
もしかしたら宝物はずっと
そばにあったのかもしれないと思った。
特別な何かでは無い。
誰の周りにもあるような普遍のもの。
それが宝物であるかどうかは
自分が気づいているかどうか?だと言う事に
その時やっと気付けた気がした。
多くは要らない。
ほんのひと握り、
ありがとうと思える何かがそばにあるだけで
心は満たされるのかもしれない。
11/21/2023, 1:30:15 AM