海喑

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不意に目が覚めた。
早く寝すぎたからかな。
眠くないし、布団に入っても1人だから私は彼の部屋に行く
部屋と言っても、2人で使ってる作業部屋なんだけど。
やっぱり居た。時間と確認してみると今は深夜12時。
こんな時間までずっと作業してる彼には休んで欲しいのだけど
彼のペースで休んで欲しいから、私はなんとも言わない。
でも、何を描いているのか気になったから私はそっと彼の描いている絵を見る
最近新しく買ったペンタブとPCを彼はとても愛用している。
私は彼の絵が好きだ。
覗いてみたら、彼の作っているキャラクター、オリキャラとも言うやつを描いていた
何年も前から見ているから設定もほぼ言えるようになったけど
その子達の姿には惹かれるものがある。
そう思っていると彼がこっちを向いて心配してくれた
「どうしたの海暗?寝なくていいの?」
私はもうこの時間帯起きないようになったし、少なくともこの時間には寝るようになったからだろうか。
「大丈夫、早く寝すぎて起きただけ。」
寝起きだからなのか、私はいつもより高い声で返す。
「そっか、ん〜、俺もそろそろ休憩しようかなぁ、海暗と話したかったし」
「そうだったの?」
「うん」
「へぇ〜、あ、休憩するんだったら外出る?」
私はこんな提案をする。彼と一緒にどこかに行くのが好きだから。
「あ〜、そういえば海暗って海好きだよね?」
「そうだね、波の音とか、私聞いてると落ち着くからさ。」
「んじゃあ行こっか、休憩がてら。」
スッと椅子から立ち私と彼は家を出る
海はそんな遠くない。歩いてすぐなんだ
だから彼の用事で一人の時は海に来て波の音を聴きながら絵を描いている
そういえば、聞いてなかったけれど彼は海好きなのだろうか
あまり好きじゃない気がする。でもこれを今言うべきでは無い
なんて考えているといつの間にか着いていた
いつ見ても壮大な海を見て私は少し笑みを浮かべて近寄る。
月明かりに照らされ鮮やかな青色の光を波に揺らぎながら発している
昼の海も勿論好きだが、夜の海はそれ以上に好きだ
海の他にも星々が見えるから。
この美しい景色に見惚れていると
突然後ろから抱きつかれた
一瞬ビクッとなったが「海暗」と私を呼ぶ声で彼だということを察した
「海よりも海暗の方がもっと綺麗だよ?」
急にくる人を殺せるこのセリフ。一体どこで覚えたことか。
「そう?海って魚とかいっぱいいるじゃん。でも私はたった1人。地味じゃない?」
「んな事ない…かいなは…1人だけでいいの…だってかいなは…」
と言いかけて彼は寝てしまった
ズルズルッと脱力して落ちてゆく体を私は掴んでおぶる
はぁ、というため息をついて私は夜の海を後にする
その時の海はとても静かだった。
まるで私が彼の言葉を聞き逃さない様にする為にしているような
そんな気がして少し笑えてきて、眠くなってきた。
2人、眠そうにしながら(片方は寝ているが)2人の家に戻るのだった。
綺麗な海をバックにして。
夜の海

8/15/2023, 2:42:13 PM