無人島に行くならば
彼女は無人島暮らしだ。
と言っても、サバイバル生活なんかではない。
最新設備を備えた安全かつ快適な住居、本土まで十数分で連れて行ってくれるモーターボート。
仕事は全部リモートで、必需品はネット注文すれば、翌日にはドローンが届けてくれる。
賢くて愛情深い二頭の大型犬と、整備済みの美しい海岸線を毎朝散歩するのが彼女の日課で、気が向くと自らモーターボートを駆って本土の街までやって来る。
街では恋人や友人と愉快に過ごし、けれどどんなに親しい相手でも、彼女は決して島へ招かない。
みんな興味津々で招待を乞うが
「ダメ、島は私の隠れ家だから」
と笑って断られてしまうから、私たちは想像するしかない。
街明かりのない島で、夜には星が降るのだろう。
緩い波の音と一緒に、人魚の歌が聞こえるのだろう。
海の向こうから真っ先に、朝陽が会いに来るのだろう。
そして何にも邪魔されず、ゆったり自分だけの時間を過ごす。
……いいなあ、そんな無人島暮らし!
10/23/2025, 1:37:10 PM