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お題『ひとりきり』

誰にも言えない夜を、何度も越えてきた。ずっとひとりきりだった。でも今、この手の中に確かに誰かがいる。若くて、まっすぐで、愚かで、真剣な——猪野琢真という存在が。

「七海サンが『ひとりきり』でいることを、俺が許さない」

彼はそう言った。
そんな言い方、ずるいな。七海はそう思った。
しかし、それを否定できなかった。

明日も知れぬ身。それでも、彼といれば救いがあると信じた。
ひとりじゃない。
そう思えた。ただそれだけで——生きていける気がした。

9/11/2025, 1:58:40 PM