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「俺、飛べねぇの。」
「は?」
「飛んだことねぇんだわ。」
「え、じゃあその背中の羽は……」
「俺にとっては飾り。邪魔なだけだよ。」
「……取れないの?」
「着脱可能であって堪るか。」
「まぁ……そう、だよね……。」
「……がっかりしたろ?」
「えっ、いや……」
「いいよ、別に。慣れてるし。今更泣いたり喚いたりしねぇから。」
そう言って彼は真っ直ぐこちらを見つめてきた。青く透き通った瞳が白い肌の奥で揺れている。
「……びっ、くりはしたけど……俺は人間だからさ、天使ってだけで凄いって言うか……飛べないからなんなんだよ、って言うか。」
「ふっ、ふははっ!あははははっ!……あー、関係ねぇか、人間には。」
「うん。関係ないよ。」
「そっか。……そっか。」
「気にしてる?」
「え?」
「飛べないこと。」
「まぁ、それなりに。」
天使は嘘がつけない生き物だ。

11/11/2023, 5:18:36 PM