信号待ち中にブブッと振動した端末を開けば、『前!』と暗号染みたメッセージがあった。首を傾げながら正面を向けば、横断歩道の向こう側で照れたように控えめに手を振る彼の姿。大きく手を振り返す。すると、通る車の間に嬉しそうに笑う姿が見えた。
あ、と瞬間思う。今なら、言えるかも。
違う。今なら、じゃない。今じゃないと、言えないかもしれない。
そわそわどきどき心が浮き立っている。早く、早く、早く、信号が変わらないだろうか。そう思いながら、信号と彼を交互に見て再びポケットにしまった端末をぎゅっと強く握った。
信号は、もうすぐ青に変わる。
"愛を叫ぶ。"
5/12/2024, 7:03:18 AM