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最後の鐘の音が聞こえた。
担任が少し寂しげに微笑む。
授業がようやく終わったと言うのに、誰も喜ばず、なんなら啜り泣きが聞こえたほどだった。
委員長が言った。「起立。」
椅子の音が響く。
いつもなら張った声で喋る委員長が鼻づまった大声で
「ありがとうございました。」と言うものだから。
クラスの運動部がここぞとばかりに大声で、
「ありがとうございました!!!!」と言った。
その声に押されて、自分の声も自然と大きくなる。

意識せずともいつの間にか視界に居た隣の席の彼女、
瞳を閉じたら落ちるであろう大きな雫を落とさないように。 眉に皺を寄せ、震えた声で、
「ありがとうございました。」 と言った。
一人一人の違った声色で聞こえた最後の号令は、ワサビを食べた時のように鼻にツーンと来るものだった。
春のくせに桜はまだ咲いていないままの学校を。
今日卒業した。

8/5/2023, 2:18:28 PM