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手紙を開くと、煙草の臭いが無遠慮に流れ出てきた。

あなたからの手紙はいつもこうだ。決して不快ではないし、何なら少し落ち着く。私のそばに居たころと変わらない、あなたの香り。
煙と不健康が混ざり合ったトップノート、続くのは灰と安堵のミドルノート。読み終わる頃に、あなたの不器用で筋張った手のラストノートが訪れる。あなたの全てを思い出すのに、十分な材料が揃ったフレーバーだ。

煙草の香りを纏ったあなたの手が、態々私のためにペンを握ってくれている。それを想像すると、何だか可笑しく、そしてたまらなく愛おしくなる。

引き出しから便箋を取り出し、すぐに返事を書き始めた。
私の手紙を開く時、あなたの元にどんな香りが届くのだろうか。万年筆用インクの香?文机で私の執筆を支える、濃いめの珈琲の香?この手紙を真横で校閲してくれている、相棒のキジトラ猫の香かもしれない。

何れにせよ、あなたもきっと、手紙を見ながら文字以上の「私」を思い起こすのだろう。猫科特有のきりりとした眼差しに押されながら、私は筆を走らせる。

願わくば、あなたの元に届く私が、美しい思い出の姿をしていますように。

5/5/2025, 10:55:38 AM