「こんな夢を見た」から始まる小説

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こんな夢を見た。友人が是非私に紹介したい相手がいるから会ってくれ、と頼んできた。そこまで言うほどの相手とはどんな人なんだろう。待ち合わせ場所に行くと、時間ぴったりに友人と男性がやって来た。
「お待たせ!」
「今日は時間ぴったりだね。それで、紹介したい人って…」
「お、興味津々。紹介するね、この人だよ」
友人に促され、前に出てきた彼は整った容姿をしていた。見惚れる私を見、目を丸くする。何か考え込むような仕草をすると、笑顔で挨拶してきた。彼は友人の友だちで、最近恋人と別れたばかりらしい。友人は落ち込む彼を元気づけようと、誰か紹介すると言った。
「何人か紹介したんだけど、駄目だったから最後にあんたの写真見せたら会いたいって」
友人はニヤニヤしながら、彼を肘で小突く。彼は恥ずかしそうに顔を背けた。こんなかっこいい人が私に…?
「取り敢えず今日はさ、顔合わせってことで交流を深めようっか」
友人に引っ張られ、日が暮れるまで色んな場所で遊んだ。トイレに行ってくると言うので友人を見送り、ベンチに座った。インドア派の私にとって、一日外で遊ぶなんて重労働だったらしい。ぐったりとしていると、隣に彼が座った。
「疲れましたか?」
「え、あ、そうですね。普段はあまり外出しなくて、人に酔ったのかもしれないです」
「そうだったんですか。なら、今度遊びに行くときはあまり人がいない場所にしましょう。今日は楽しかったです」
連絡先交換しましょう、と言われるまま、連絡先を交換すると友人が戻ってきた。
「ごめん、トイレ混んでて遅くなっちゃった」
友人は苦笑しながら、私と彼が座るベンチの前に来た。
「じゃあ、帰ろっか」
友人に促され、立ち上がり遊園地の出口に向かって歩く。後ろで友人が笑いながら、彼の背を叩いている。それから、たまに彼からの連絡が来て遊ぶようになった。ほとんど、私の要望に沿ったものばかりだったが。彼は、行きたい場所とかないんだろうか。一度尋ねてみたが、ないよと即答された。
「あなたが楽しければ、それで良いんですよ」
「そう言われても…やっぱり悪いというか」
「いいから」
話を打ち切られてしまった。物腰柔らかそうに見えて、わりと強引な人らしい。数日後、友人が連絡をしてきた。何だか慌ててるみたいだ。早く来い、と言われ、友人のアパートに着いた。話を聞くと、彼は友人の隣の部屋に住んでいてさっきから女の話し声がすると言う。
「あいつ、あたしが紹介してやったのに他の女連れ込んでるよ」
「優しい人だから、断れなかったんじゃ…」
友人に睨まれ、口を噤む。
「まあいいわ。こうなったら証拠掴んで、ついでにあいつの胸倉掴むから」
とても頼もしいけど、少し怖い。壁に耳をつけ、耳を澄ます。
「…そういや、最近どうなの?」
「どうなの、って?」
「ほら、わたしと別れた後女の子紹介してもらったらしいじゃない?」
「何で知って…」
相手は元カノらしい。彼は動揺している。私も自分の話題を出され、心臓を鷲掴みされた気分になった。
「別にいいでしょ、そんなこと。それで見たんだけど、すっごく地味ねえ。話とかつまんなそう」
ズキッとトゲが刺さったような痛みが胸に走った。同時に、隣の友人が舌打ちするのが聞こえた。すぐに壁越しに何かを蹴る大きな音がして、肩が跳ね上がる。
「…お前さあ、彼女の何を知ってるわけ?」
聞いたことのない彼の低い声が聞こえる。相当怒っているみたいだ。私は覚えていなかったが、彼はかつてのクラスメイトだった。孤立した彼に私が話しかけてきたことに感激し、それをずっとお守り代わりにしていたらしい。振り向いてもらえるように自分磨きをし、そして今に至る。それから、マシンガンのような私への褒め言葉が始まった。彼いわく、私は彼にとっての女神様で私への悪口は神様への侮辱や冒涜に近いらしい。呆気にとられているのか、元カノが口を挟むことはなかった。ニヤニヤする友人と目が合い、私は羞恥で顔を覆うしかなかった。

4/15/2026, 9:51:36 AM