にや

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清楚な美少女に浴室に連れ込まれて目が覚めた。

これだけなら、男なら誰もが羨む展開だろう。

しかし、実際は昨日から着たままの縒れたスーツのままいい歳をした男3人で浴室に放りこまれ、その上から袋ごと白い砂のようなものを浴びせかけられた。夢も色気もあったもんじゃない。

「うぇっぷ。なんですか…?」

鑑識官の守山は寝起きの重たい頭を振る。革のソファで、座ったまま寝ていたせいか身体中の関節が凝り固まっているようだ。

「うへ、塩だな。こりゃまた、大層なおもてなしだ。」

すぐ隣から、先輩である検視官の鳶田の呻く声がする。その声で、昨日の事をクリアに思い出せた。

連続不審水死事件。その事件の真相を探しに、SNSを騒がせている“海神様”の出るという海辺に向かったのだった。

その後、夜遅くということもあり、目黒探偵事務所で夜を明かしつつ雑談をしていたのだが、いつの間にか寝てしまっていたようだった。

「塩…昨日、祠に行ったからですか…でも、彼女、なんで…」

まとまらない頭で言葉を捻り出すが、舌がもつれる。思ったより動揺しているようだ。

「あの娘、紗枝ちゃんつってな。寺の娘かなんかでこのテのこと詳しいんだ」

鳶田がネクタイを緩めつつ、シャワーを捻る。手足についた塩を落としたいのだろうが、狭いマンションタイプの浴室に男3人。迷惑なんてものじゃない。

「ちょ、鳶田さん。せめて順番にお願いしますよ!」
「あ、悪ぃ。んで、紗枝ちゃんだけど、なんでここにいるかって、目黒の身内なんだわ」
「え」
「姪っ子なんだと」
「ええ!」

驚いて振り返ったせいか、真正面からシャワーを浴びる羽目になった。

足元では濡れているにも関わらず、随分手荒な真似をされても夢の世界にいる目黒探偵が転がっている。

「じゃ、先出とくわ」

あっさり出ていった鳶田を追いかけようとスーツにこびりついた塩を払う。流れたままのシャワーを止めようとしたが、転がったままの目黒に躓き盛大に浴室の冷たい床とキスをする羽目になった。

2/5/2024, 9:40:16 AM