鶴づれ

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奇跡をもう一度


「嘘でしょ…」
 目を何回もこすって、また大きく張り出された新入生の名簿を見る。
 間違いない。私とクラスは違うけど、彼の名前がある。
 小学五年生の頃、初恋を捧げた彼だ。

 消しゴムを拾ってもらったとか、転んだ時に大丈夫?と声をかけてくれたとか、そんな彼の小さな優しさを好きになった。中学校は別々だったし、同じクラスだったのは五年生の時だけで、私から話しかける勇気もなかったけれど。
 小学校を卒業しても、中学校を卒業しても、ずっと心のどこかにいた。

 まさか、同じ高校を受けていたなんて。
 この奇跡をくれた誰かに、全力でお礼を言いたい。
 そして、図々しいのは百も承知だけど、もう一度奇跡をくださいとお願いしたい。
 彼と関わるきっかけを、勇気を、私にください、と。

10/2/2023, 1:17:14 PM