こんな夢を見た。
「そうか、この世界は偽物なんだ!」
私がそう叫ぶと、半分寝ぼけていた親友は驚いたのかイスから転がり落ちそうになった。
「な、何?急にどうした?」
「今更、白を切らないで。この世界はあんたが作ったんでしょ?それで本物の世界はあんたが壊したんだ!」
「…大丈夫か?疲れてるんじゃないのか?」
親友は疲労で私が狂ったと思ったのか、哀れみの目を向けている。そんな目をしても、もう騙されないぞ。
「私は疲れていないし、狂ってもいないよ」
「ちょっと待てよ、俺はただの人間だって。分かってるだろ、生まれたときからずっと一緒なんだから」
彼は慌てて弁解し始めた。そう言うと思って、私は彼の口元を指差した。
「だったら、あんたの口元のほくろはどうして左についてるの?生まれたときから右の口元についてるのに」
すると、彼はアッと声を上げ口元を隠した。
「しまった、反対に真似しちゃった…」
ぐにゃぐにゃと粘土のように彼の体が伸び縮み丸まったかと思うと、大きな黒い影になった。
「えへへ…もうバレちゃった。そんなに睨まないでよ。何で気づいたの?」
「一年経つのに、カレンダーやテレビの西暦が去年のままだったから」
「あ、そうか。四季が一周したら一年か。調整しとくね。…ところで、何か言いたそうだね」
影はこちらに近寄ってきた。私の鼻先に影の爪がツンツンと当たる。
「あれでしょ?どうして偽物の世界なんか作ったのかって聞きたいんでしょ?」
言い当てられて、目を丸くする。
「どうして、知って…」
「もう何度目か分からない質問だもの。長い付き合いだからね、君とも。ねえ、今回も知りたい?」
質問の意図が分からず、口ごもる。今回も、ってどういうこと。もしかして、今まで影に同じ質問をしている…?
「どうせ、結果は変わらないから教えてあげるね。世界を壊したのは、ぼくじゃなくて君の選択。壊れた世界に君だけは可哀想だから、偽物の世界を作ってあげたんだ」
「え」
「でも、人間って一人じゃ生きてけないでしょ?だから、ぼくの複製体が君の周りの人たちを真似してるの」
こーんな風に、と影は先ほどと同じように親友の姿を真似してみせた。今度は、ほくろの位置が合っている。説明が頭に入ってこない。
「私の選択が世界を壊した…?」
「うん。まあ、元気出しなよ。住めば都って言うじゃない。君の選択がたとえ間違いだったとしても、ぼくは全く気にしないよ」
影からの慰めも心に響かない。ただ自責の念がぐるぐると頭を回り続け、ぐらぐらと意識が遠くなってくる。
「あ、眠い?寝ていいよ。寝たら何もかも元通りだから。寝かしつけてあげよっか?」
影に無理やり寝かしつけられた。頭を撫でられ、ポンポンと背中を叩かれる。こういうおままごとも良いね、と影が呟くと同時に意識が途切れた。
4/23/2026, 9:53:23 AM