はじめまして
そう言われた時、喉の奥がヒュッと鳴った。
間違えてはいないはずだ、いや自分が間違えるはずもない。
自分に「はじめまして」と言った彼女は、黒髪ロングでにこりと微笑めば牡丹のように美しい彼女は、まごうことなく前世で自分が愛した女性だ。
彼女とは周りから祝福される関係ではなかったものの、深く愛し合った仲だ。彼女が亡くなる前、来世は何の障害もない世に生まれて一緒になろうと誓い合った仲だ。
そんな彼女が自分を忘れて挨拶と自己紹介を始めた。
初めてじゃない!名前なんか昔から知ってる!
そう叫びたかった。でも、叫べなかった。
記憶がなくても彼女を愛し抜く自信はあるし、振り向いてもらうように努力する気もある。
ただ、あの約束を、誓いを忘れてしまった彼女は今世で自分以外の男と幸せになるべきではなかろうか。前世の記憶に縛りつけるのはかわいそうではないか。
何故彼女の「はじめまして」は真っ新な「はじめまして」なのだろうか
今世では「はじめまして」の意ではないのだろうか
4/1/2025, 1:56:00 PM