ほろ

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あたしは今、狭く暗い部屋に閉じ込められている。
もう何日経ったか分からない。閉じ込められたのは昨日だったかもしれないし、何十年も前だったかもしれない。
一つ確かなのは、しばらく光を見ていないことだった。
時折部屋の外で声はするのだけど、あたしを出してくれる気配はない。

そんなある日、部屋が大きく揺れた。グラグラ、ガタン。長い揺れの後に何かが外れる音がして、薄らと日の光が差す。そこから、暗い部屋はどんどん明るくなっていく。
あの音は日の出の合図だったんだわ。きっとそう。あたし、外に出られるんだわ。また日の光を浴びれるんだわ。
期待に胸をふくらませて、日の光と共に伸びてきた神様の手に包まれる。

「うわ、なつかしー。なんだっけ、ハルちゃん? こんなとこにしまってたんだ」

神様はあたしを抱き上げる。
高い位置から、地上が見える。ピンクの大地、白い島、神様が座る赤い椅子。
あたしをハルちゃんと呼んだ神様は、ガサガサと音の鳴る空間へあたしを放った。
「でももういらないし、捨てていいよね」
神様があたしを見て笑う。

なるほど、ここがあたしの新居なのね。狭くて暗い部屋から出られて、本当に良かったわ。ありがとう神様。

1/3/2024, 1:24:18 PM