空を見るのが好きだ、こどもの頃から。
私の生まれたのは港町で、まだよちよち歩きの子供でも、家からまっすぐ歩けばすぐに防波堤までいけたのだ。
よく、1人で防波堤まで行っていた。そこで、空と海と、雲とカモメを飽きずに眺めていた。
今から思えば、かなり危険な行動だったかも知れない。
実際に死ぬ寸前までの危ない記憶がある。
その時は1人ではなく3歳上の姉もいた。
少し物憂げな空だったが、近所のこととていつもの習慣で防波堤まで遊びに行った。
防波堤は階段を降りると砂浜まで降りて行く事も出来た。大きなテトラポットがゴロゴロ置いてあり、
階段つづきのコンクリートの細い通路があって、通路を渡ると砂浜だった。
1人で砂浜までは行かなかったが、その日は姉もいたから砂浜まで降りて遊んでいたのだが、
物憂げと思っていた空が、陰鬱な空へと変わり、やがて風が出で来て小雨さえパラパラ降って来た。
そんな中で遊んでいても楽しくないからそうそうに引き上げたのだが、あっという間に、何だか潮も満ちて来て階段につづく通路まで来ていた。
2人そこを通って帰ったのだが、みるみる変わる風景に怖気付き、私は足がすくんで止まってしまった。
前を見ると姉は白状にも私を置いてスタスタ先を歩いて行ってしまった。通路から足を滑らさせて落ちれば死んでいただろう。
私は慎重にゆっくり歩いたが、通路まで迫る波しぶきの中に、大きなドブネズミの死骸を見た時には泣きそうになった。
私は幼稚園入園の年にその町から引っ越し(そう、入園前の出来事なのだ)、牧場の近くにすむのだが、
海辺の町には祖父と祖母の家があったから頻繁に遊びに行った。
しかし、あの日の急変する海と空の風景は未だに時々思い出す。あれは本当に危なかった。
これが私の原風景なのである。
2/26/2024, 3:19:33 AM