村人ABCが世界を救うまで

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空は白く烟り、空気は濁り、カード型の測定機は見たこともない数値を叩き出している。

空想した未来都市は愕然とする薄汚さだった。遠くで機械がこすれ合っている音がする。換気扇のような音も。初めてなのになんだか既視感がある。不快な音がずっと地面から響いてくるのだ。

身体の表面をほんの数ミリで守る見えない防護スーツは常に危険信号。
「空気やばいですね…」
「分かるか」
分かりますよ…。激マズです。顔をくしゃりとやると、隣の女性の主は何が面白かったのか子供のようににんまりした。


世界にも時間にも環境にも見放された、文化科学の最果てのこの世界は、住む人も動物も、もうまともではない。
空は富裕層のために覆われ、太陽の光はすき間からしか届かない。
まるで地下のような地面。ここでは地表と呼ばれているが… 大昔の大地震などの大災害のあとはなんの手も付けてもらえなかった跡がある。
大地には雑草が茂り下水が垂れ流し。病原菌を持った動物や虫がうようよとしている。

「ま。私もそんなに居たくはないんだけどね」
「なんかここに用事ですか」
「そ」
瓦礫をひょいと飛び越え、地下の建物に入っていく。手すりは埃や煤だらけで触りたくもない。
崩れそうな地下に、その店はあった。明かりはランプ2つ。壁に1つ。周囲には雑然と小道具や鉄くずが積まれている。触ったら一斉に落ちてきそうだ。
「来たが」
店主がいた。色黒の年寄りが迎えてくれた。
「調子はどう」
「だめだね」
「またまた」
主が突然、馴染みのように饒舌に話し出す。
自分には老人の言葉はなまりがあるなと思った。耳と脳の間にある変換器が妙にずれる。


それにしても、主の人の変わったような笑顔はどうだ。まるで女子高生のようじゃないか。にこにことして、なんだか面白くない。
「そが男はなんだね」
「相棒だよ」
「それの分も作るってぇ話か」
「ああ、それは大丈夫。私の分だけ頼むよ。お代は弾む」
「惜しまねぇなおめは」
「当たり前だ」
最高品質な獲物のためならばいくらでも払う。彼女は、性能的な物への投資に糸目はつけないのだ。

「私の子達の命に比べたら安いものさ」

注文した青銀色のナタを水平に上げて、彼女は愛しげに囁いた。
子って…?と、思わず彼女を探すと目が合った。ふわりと妖艶に笑っている。



お金より大事なもの

3/9/2026, 8:23:05 AM