喪失感は、桜吹雪。
君は、そんな悲しい気持ちや負の感情を、良く花の一生に例えていたね。
けれど、僕は……君のように、そんな負の感情を花の一生には例えられない。
君が居ないから、そうする意味を失ってしまった。せっかく覚えた言葉も、その意味も、全部、全部……………。
ポタッ、ポタッ、
「………何で、君は居ないの?」
僕の問いかけに、君が答える事はもうない。
君が優しく笑う顔も、君が困る顔も、何もかも、もうない。
「君は、僕に沢山の事を残してくれた筈なのに、今の僕には、何も見えない。思い出せない………、嫌だな、君がしてくれた事が、全部無駄になってしまったみたいだ………」
サアアアアッ、
晴れた空を風が吹いて、今年も綺麗に咲いた桜の花びらをハラハラと漂わせる。
そんな桜の花びらが一枚。
僕の頬に落ちて、貼り付いた。
まるで、君のようだと思った。
「君が残したもの、今は無理でも、ちゃんと覚えているから、思い出すから、だから、待っててね…………」
僕は桜の花びらをそっと掴み、手のひらに乗せてふうっーと優しく息を吹き込む。
そうしたら、桜の花びらはフワッと舞い上がり、また違う場所へと運ばれていく。
桜の花びらが、今日、初めて散った日だった。
その年の桜の花びらが初めて散った日、君は桜の様に優しく散った。優しく、旅立っていった。
僕の、初恋の君。
さようなら。
さようなら。
9/10/2023, 10:25:54 AM