27(ツナ)

Open App

「届かないのに」

大好きだった祖母が亡くなった。

私よりも祖母のことが大好きだった姉は私より比べ物にならないくらい絶望して泣いていた。

数日後、すぐに祖母の葬儀が執り行われた。
相変わらず姉は泣いていた。
出棺前の納棺式で祖母の生前の服や持ち物、思い出の品を入れ棺のフタを閉めようとしたその時、それまで一言も発さなかった姉が口を開いた。
「…あの。最後にこれを。」
バックから封筒に入った手紙を取り出し、祖母の手の上に手紙を置き、それから棺のフタは閉じられた。

火葬場へ向かうバスの中で、私は姉に尋ねた。
「いつの間に手紙なんて用意してたの?…もう、おばあちゃんには届かないのに。」

「これは生きてる人間のエゴだよ。…届かなくてもいいの。私から、おばあちゃんへの感謝だから。手紙を送れるだけで満足!」
涙で赤く腫れた目を細めて満足気に笑った姉がなんだか無性に愛おしく思えた。

6/17/2025, 11:02:50 AM