【やさしい嘘】
彼女は花畑の大きな木の下で眠っていた。
「こんなところに独りなの?」
花に降り立つ蝶は彼女を嘲笑った。
彼女は微笑んでゆっくり口を開いた。
「ええ、もう疲れちゃった」
「どうして疲れたの?何をしたの?」
近くにいる小鳥が彼女を心配した。
「みんなを愛していたの。でも、もう怖いのよ」
彼女は涙を流しながら静かに答えた。
「何が怖いんだ?良いことじゃない」
彼女を抱きしめる木が諭した。
「私がこの心の…見返りを求めることを。」
彼女は独りで終わらせるつもりだった。
森は詠う。彼女を安心させるように。
「大丈夫。みんなあなたを愛していたよ。」
彼女は幸せそうに笑っていた。
「やさしい嘘ね。ありがとう。
…でもね、許せなかったの。最期まで。」
彼女はゆっくり目を開けて、幸せな幻覚全てを消した。
彼女を気に掛ける者などない色褪せた世界で、
今度こそ彼女は永い永い眠りに就いた。
1/24/2025, 11:23:25 PM