緒方

Open App


遠くを見つめる、真っ黒な目。

光を一つたりとも受け入れない深淵。

人の行き交う駅前で、君一人が異質だった。

夜の羽虫が電灯に引かれるように、私は君の魅力に逆らえない。

掠れた声で名前を呼べば、首だけがこちらを向いてくれる。

美しい口もとが、緩く弧を描いて。

君はそのまま、くしゃりと顔を歪ませて笑った。

子供のように無邪気に、悪魔のように美しく。


気高き美が年相応に揺れるとき。


それは、禁断の果実を喰らう、背徳の味。



【子供のように】

10/13/2023, 1:31:06 PM