27(ツナ)

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「芽吹きのとき」

放課後。特にやることもなく、校内を適当に散歩していた。

人気のない西棟の校内を何の気なしに歩いていると、教室の扉が少し開いていて、人の歌声が微かに聴こえてきた。
誰もいないと思っていた僕は驚いたが、興味本位で教室に近づいて様子を盗み見た。

とても綺麗な歌声と後ろ姿に思わず夢中になり見惚れていると、扉に軽くぶつかり物音を立ててしまった。
歌っていた彼女がビクッとして、僕の方に目を向ける。

「ごめんなさい!!た、たまたま、歌が聴こえてきて!!凄いキレイで!あの、えっと…すいません。」

「…ふふっ、いいよ。別に。キレイだった?ありがとう。」

振り返った彼女は暖かな西陽に包まれ、まるで後光が差した女神のようだった。

僕の心になにかが芽吹いた瞬間(とき)だった。

3/1/2025, 11:17:54 AM