ゆじび

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「カメラ」

ボタンをひとつ押して簡単に写真を撮った。
ぐちゃぐちゃな髪に毛玉だらけのパジャマ。
放り出された枕たち。きっと枕投げをしていた。
このときの私はきっとまだまだ眠りたくないと思っていただろう。

カシャッ。
その音だけが私の脳に残っている。
大好きな友達と恋ばなをして馬鹿みたいに笑って。
うるさいってお母さんに怒られたっけな。
   この思い出たちも写真を見るまで忘れていた。
いつだろう。いつ記憶から抜け落ちていったのだろう


病気?入院?手術?お葬式
気軽に友達と逢えなくなったのはいつからだっただろう。私の体が悪くなった訳じゃなくて友達の身体が少しずつ、少しずつ骨みたいになっていく。
いつでも笑って欲しくて。笑っていたくて。
お見舞いに行くときもずっと笑っていたな。
でもいつからだろう。
自然に笑えなくなっていったのは。
友達が痩せこけて来た頃だろうか。

居なくなっちゃった。
大切な人が終わってしまった。
会いたいと言えなくなった。
写真を撮ったあの頃にはもう戻れない。
この写真をたなの奥に戻して。
現実を見たら。

もう

きっとそこに貴方はいない。

9/10/2025, 9:56:27 AM