『エイプリルフール』
「私、実は天使なんだよね。羽とかわっかとか無いけど。」
私のとなりに座る彼女は、桜の咲く大木の下でそう言った。私らの住む地域には100年に1度だけ天からの使者(みんな天使って言ってるけどこれが正しい言い方らしい)が何らかの理由で苦しんでいる人を救済するために降りてくるという神話がある。何らかの理由って言うのは、降りてくる天使によって違う理由で苦しむ人を救済するから、条件が分からないらしい。この話はいろんな人に聞いたけど、みんな分かんないんだって。
あまりに彼女が急に言ってくるのもだから、私は彼女に頼んで作ってきてもらったティラミスを喉に詰まらせそうになってしまった。私は思わず
『マジ?』
と聞いた。いつも楽しそうに面白おかしく喋る彼女が、こんな真剣な顔で冗談を言うと思えなかったから。そうだ。だから聞いたのだ。すると彼女は
「うん。」
とみじかく返事をした。そして
「もうすぐ役目が終わりそうだから、言っておこうと思って。」
と言った。役目とは、きっと救済のことだろう。それじゃあ、もう天国にかえってしまうということだろうか。そう考えた私は、思わず彼女に抱きついた。そして彼女がとまどっているのに目もくれず
『待って。やだよ。あんたがいなくなるなんて。私も連れてって。』
気づけばそう言っていた。彼女は一瞬驚いたが、私の気持ちを考えてくれたのか、
「大丈夫だよ。」
と私からゆっくりはなれてそう言った。私たちに帰宅を促すかのように、時計塔の鐘が鳴る。何故か私は安心してしまい、彼女の微笑みにこたえるように私も笑った。すると彼女は、急にいつもの彼女に戻ったかのように
「じゃあ追いかけっこしよ!私逃げるね!はいっ、始め!」
そう言って走り出してしまった。驚いたが、彼女が唐突になにかを始めるのはいつものことだ。なんとなく嬉しくなって、私も彼女を追いかける。でも、目の前を走っていた彼女が転んでしまい、私も彼女につまずいて2人で原っぱに仰向けに転がる。互いに目があった私たちは、可笑しくなって大笑いした。ひとしきり笑ったあと、彼女が
「さっきの話、嘘だよ。」
と言って、スマホの時計を見せてきた。時刻は4月1日の午前0時2分。
「ほら、エイプリルフール」
理解したけど理解したくない事実を再確認させるように、彼女はそう言った。
『え、じゃあ...』
「うん。私が天使ってことも、もちろん役目が終わるなんてことも嘘。」
『なんだよぉ...ほんとかと思ったじゃん...』
「あはは、ごめんごめん。大丈夫だよ。あんたの前からいなくなったりしないって。」
『よかったぁ...』
よかった。時間になる前に言うことができた。時間になっちゃったら、そこからは嘘になっちゃうもんね。
(ここからは投稿主が喋るだけです)
スクロールお疲れ様でした!ここまで読んでくださりありがとうございます!
んだこの小説って思われた方もいらっしゃると思うんですが、私なりに色々考えてかいたので、少し補足というか説明的なのを書かせてください。
・まず、時計塔の鐘のタイミングについて。”彼女”が、自身が天使であると言うことを話したあとに、時計塔の鐘が鳴っています。そしてこの話の最後の、スマホの時計の時刻は4月1日の0時2分。つまり時計塔の鐘は、4月1日になった瞬間に鳴らされていることになります。(私のなかで時計塔の鐘は0時ぴったりに鳴るイメージなんですぅ適当とか言わんといてくださいぃ) ということは、鐘が鳴る前に話された”彼女”が天使であると言う話は…
・次にこの話の序盤に出てきたなんの変哲もなさそうなティラミス。ティラミスにしたのにはちゃんと理由があります。ティラミスには「私を上へ引っ張って」「私を元気付けて」などの意味がありますが、実は『私を天国へ連れてって』と意訳されることもあるそうです。(本来はアダルトな意味ですが、ここでは特にアダルトにはしてません笑)
そして”私”は”彼女”にティラミスを作ってもらった。と言うことは…
あと、最後の所は、視点主が変わってます。”私”から”彼女”に。
他にも色々なところに表現を工夫した箇所があるので、ぜひ考察してみてほしいです!
誤字脱字等あったらすみません。
私的には、”私”は生きるのが苦しかったけど”彼女”といる時間が救済のように感じて、もしも”彼女”が天使だったら、”彼女”に天国へ連れてって欲しかった。みたいなのが”私”の中にあるんだよねーってことが伝わってほしいなぁーって思ってます。ホントに長文過ぎて自分でもびびってますごめんなさい。果たしてここまで読んでくださる方がいらっしゃるか…読んでくださっていたら私が泣いて喜びますありがとうございます。
4/2/2023, 11:29:16 AM