トポトポと液体が注がれる。
紅い蜜色をした少し濃いめの紅茶。
アールグレイの香りが部屋を満たす。
ソーサーの近くにはクッキーの入った小皿が並べられていた。
「お嬢様、お茶の準備が出来ましたよ」
「まあ、セバスチャン。ありがとう」
同じ声が会話をしている。
「今日のお菓子は特別にデパートから取り寄せたものです」
「あの美味しいクッキーね。楽しみだわ」
「ティーカップも合わせてお気に入りのものを揃えました」
「あの小花柄ね。セバスチャンは私のことを何でもお見通しね」
午後3時。
1人で会話をしながらティータイムの準備をする。
先日購入した美味しそうなクッキーを食べるために、お気に入りのティーカップを添えて。
今日はスカートを履いていないから、付けっぱなしのエプロンをスカートに見立てて裾をつまみ、恭しく椅子に座った。
「さぁ、冷めないうちにお茶をどうぞ。ありがとう、セバスチャン」
席についた私は、また1人でやりとりをして、ティーカップに口をつけた。
/11/12『ティーカップ』
11/12/2025, 9:32:42 AM